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名古屋地方裁判所 平成2年(行ウ)20号 判決 1990年11月30日

愛知県宝飯郡音羽町大字赤坂字大日一五〇番地の二

原告

青山直樹

右訴訟代理人弁護士

長屋誠

豊橋市前田町一丁目九番地

被告

豊橋税務署長 大須賀俊彦

右指定代理人

高瀬正毅

永井良治

鈴木彬夫

清水利夫

杉山仁

説田義直

主文

本件訴えをいずれも却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が亡青山森勝の所得税につき相続人たる原告に対し昭和六二年四月一九日にした所得税決定処分を取り消す。

2  被告が、昭和六二年二月二五日付でした原告名義の株式会社東海銀行国府支店の預金に対する差押処分を取り消す。

二  本案前の答弁

主文同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  亡青山森勝(以下「亡森勝」という。)は、昭和五八年三月一六日死亡し、原告は、亡森勝を相続した。

2  被告は、昭和六二年四月一九日付で、原告に対し、請求の趣旨1項に記載の処分(以下「甲処分」という。)をした。

3  被告は、昭和六二年二月二五日付で、原告に対し、請求の趣旨2項に記載の処分(以下「乙処分」という。)をした。

4  甲処分及び乙処分は、いずれも違法な処分である。

5  よって、原告は、被告に対し、甲処分及び乙処分の各取消しを求める。

二  被告の本案前の主張

1  被告は原告に対し甲処分を行ったことはなく、本件訴えのうち甲処分の取消しを求める部分は、存在しない処分の取消しを求めるものであるから、不適法である。

2  本件訴えのうち乙処分の取消しを求める部分は、以下のとおり、適法な異議申立て及び審査請求を経ていないから、不適法である。

(一) 亡森勝は、その昭和五六年分所得税の確定申告書を昭和五七年七月二八日に提出し、これによって同人の昭和五六年七月二八日に提出し、これによって同人の昭和五六年分の所得税本税二〇二万四六〇〇円が確定したが、右申告が期限後申告であったため、被告は、昭和五七年八月二〇日、亡森勝に対し無申告加算税二〇万二四〇〇円の賦課決定した。

(二) 亡森勝は、昭和五八年三月一六日死亡したため、被告は、相続人である原告に対し、昭和六一年八月一八日、国税通則法五条により納税義務の承継及び納付責任額の通知を行ったが、原告は納付を怠った。

(三) そこで、被告は、昭和六二年二月二五日、株式会社東海銀行(国府支店取扱い)の原告名義の通知預金(預入番号No.1・口座番号二〇七―六三〇。以下「本件預金」という。)を差し押さえる乙処分をし、同月二七日、三六二万二四〇〇円を取り立てた上、同日配当を実施し、滞納国税(本税二〇二万四六〇〇円、無申告加算税二〇万二四〇〇円、延滞税一三九万五四〇〇円)に充当した。

(四) 原告は、昭和六二年四月二一日、被告に対して乙処分の取消しを求めて異議申立てをしたが、右申立ては、「差し押さえられた預金は第三者に帰属するものである」との理由であったため、異議申立ての利益を欠く不適法なものとして却下され、その後、原告は審査請求をしていない。

(五) 青山利夫は、昭和六二年八月七日、国税不服審判所長に対し審査請求をしたが、同審判所長は、同年九月二四日、請求人を当事者とする異議申立てを経たものでないことを理由に、右審査請求を不適法なものとして却下した。

三  被告の本案前の主張に対する原告の認否及び反論

(認否)

1 被告の本案前の主張1は争う。

2 同2のうち、冒頭の主張は争い、(一)ないし(五)の各事実は認める。

(反論)

亡森勝が交通事故で死亡したことに伴って原告が受領した自動車賠償責任保険金の管理は原告の後見人である青山利夫が行っており、原告は乙処分が行われるまで本件預金の存在すら知らなかったのであるから、本件訴えのうち乙処分について出訴期間を徒過したとしても、原告には行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)一四条三項所定の「正当な理由」があるというべきである。

四 原告の反論に対する被告の認否

すべて争う。

理由

一  原告主張の甲処分は存在を認めるに足りる証拠はない。したがって、本件訴えのうち甲処分の取消しを求める部分は、存在しない処分の取消しを求めるものであって、不適法である。

二  被告の本案前の主張2(一)ないし(五)の事実は、当事者間に争いがない。これによれば、原告は乙処分について被告に対する適法な異議申立てを行わず、また、国税不服審判所長に対する適法な審査請求も行わなかったのであるから、乙処分の取消しを求める訴えは、国税通則法一一五条一項、七五条一、三項、行訴法八条一項ただし書により不適法である。なお、原告は、原告には行訴法一四条三項所定の「正当な理由」が存する旨主張するが、右規定は出訴期間に関するものであり、審査請求前置の要件に関する主張としては、主張自体失当である上、仮に、原告の右主張を行訴法八条二項三号に規定する「正当な理由」の主張と善解し、かつ、原告の反論で原告が主張する事実が存在するとしても、なお、同号に規定する「正当な理由」が存するものとは認められない。

三  よって、本件訴えはいずれも不適法であるから却下することとし、訴訟費用の負担につき行訴法七条、民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 浦野雄幸 裁判官 杉原則彦 裁判官 岩倉広修)

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